加齢・老年病科

加齢・老年病科|後期研修要項

沿革

1987年、東北大学病院に診療科としての老人科が設置され、佐々木英忠氏(日本老年医学会前理事長) が老人科教授に選任されました。2006年6月には内科病態学講座 老年病態学分野と名称が改まりました。2008年1月学内措置により東北大学加齢医学研究所の新規臨床研究分野となり、荒井啓行教授のもと現在の老年医学分野に至っています。

教育方針と教育スタッフ

  • 内科認定医に加え老年病専門医を取得する。総合内科専門医を目指してもよい。
  • 1人1人の医師が専門性を有しながら、多領域に対応できる臓器横断的スキルを獲得する。
  • 1人1人の医師の将来設計を尊重する。
  • 妥協を恐れず、協調性の高い人材を育成する。
荒井啓行 教授、診療科長、
内科学会認定内科医、老年医学会老年病専門医、神経学会神経内科専門医、認知症学会専門医
古川勝敏 副診療科長、内科学会認定内科医、神経学会神経内科専門医、認知症学会専門医、老年医学会老年病専門医
冲永壮治 内科学会認定内科医、呼吸器学会専門医、老年医学会老年病専門医

各種教育研修コース

東北大学老年科では、初期臨床研修を終了した医師のみならず卒後すでに10~20年のキャリアーを積んだ医師や修士課程修了者で、今後老年学・老年医学をライフワークとしたい医師・研究者のために、1) 老年病専門医コース 2) 大学院博士課程コース 3) 他科ローテーションコースの後期研修プログラムを用意しています。

老年病専門医コース

初期臨床研修を終了した医師のみならず卒後すでに10~20年のキャリアーを積んだ医師にお勧めです。認定内科医取得後、老年医学会認定老年病専門医を取得することを目的にします。必要に応じて院外研修病院での研修も可能です。学位も希望する方は専門医コース終了後、大学院博士課程コースに進学可能です。

1年目:老年科医が身につけるべき必須の基本的スキルの習得

  • 初期臨床研修に引き続き、内科各領域の経験と知識を深める。内科学会認定内科医を習得する。
  • 認知機能検査、基本的ADLや手段的ADL、うつ状態の評価を行ない、Comprehensive Geriatric Assessmentを施行できる。
  • 家族の介護負担を理解できる。
  • 介護保険主治医意見書を作成できる。
  • 頭部MRIやSPECTなどの画像診断ができる。
  • 頻度の高い認知症(アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症など)の診断と治療を行える。
  • 誤嚥性肺炎の診断と治療を理解できる。
  • ベッドサイド簡易嚥下機能評価を行える。
  • 高齢者の臨床検査値の特徴を理解できる。
  • エコーガイド下中心静脈確保ができる。
  • Mini-Nutritional Assessmentによる低栄養評価を行える。
  • Up&Go試験や重心動揺検査による易転倒性の評価を行える。
  • 専門医と協力して心・血管イベントの急性期対応ができる。

2年目:多様な高齢疾患に対応できる高度な技能と見識の獲得

  • 稀少認知性疾患(前頭側頭型変性症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、クロイツフェルトヤコブ病など)の診断ができる。
  • 認知症対応薬としてドネぺジルのみならず、抗精神病薬、睡眠導入剤、漢方製剤などの使用に習熟する。
  • 腰椎穿刺ができる。
  • せん妄の診断と治療ができる。
  • 肺炎治療のため気管支肺胞洗浄を行える。
  • 重症肺炎のレスピレーター管理を理解できる。
  • トロッカー挿入を行える。
  • 嚥下性肺炎予防のための食事・生活指導ができる。
  • 多様な疾患を抱える高齢者に接し、治療優先順位を勘案した適切な対応ができる。
  • 専門医と協力して心・血管イベントの急性期対応ができる。

3年目:社会が求める・社会のために働ける優れた老年科医を育成する

  • 高齢者のMedication Managementを理解し、高齢者の安全な薬物治療を行える(大類孝教授との共同指導)。
  • 高齢者にとって使用を控えるべき薬物のリストが理解され、自信を持ってDiscontinuation of drugを行なうことができる。
  • 薬物有害事象による緊急対応を経験する。
  • 多様な疾患を抱える高齢者に接し、治療優先順位を勘案した適切な対応ができる。
  • 高齢者のADL、認知機能、摂食嚥下機能などを勘案して終末期の栄養摂取の方法を選択でき、胃婁造設の判断ができる。
  • 専門医と協力して心・血管イベントの急性期対応ができる。

学術研究活動

  1. 内部での症例報告会で発表できる。
  2. 当番制内科症例検討会で発表できる。
  3. 老年医学会地方会で症例報告を行なう。
  4. 老年医学会学術総会へ出席する。
大学院修士・博士課程コース

初期臨床研修期間を終了した若い医師や自然科学系修士課程修了者を対象とします。大学院4年間に担当教官の指導のもと1つの研究テーマに取り組みます。4年目には研究内容を英文論文として仕上げ、学位審査を受ける準備をします。医師であればこの間も「患者から学ぶ」姿勢を養うため、病棟主治医となります。大学院在籍中に内科学会認定内科医や総合内科専門医を取得し、さらに老年医学会認定老年病専門医や認知症専門医、呼吸器専門医、神経内科専門医、漢方専門医などを目指します。医学博士取得後は、さらに高齢者のための総合内科医即ち老年科医としての研鑽を積み、海外留学できるよう準備します。探索的漢方研究や高齢者コホート研究を目指す修士課程修了者や学部卒業生も歓迎します(後述の「研究プロジェクトの特色」を参照してください)。

学術研究活動

  1. 内部での症例報告会で発表できる。
  2. 当番制内科症例検討会で発表できる。
  3. 老年医学会地方会で症例報告を行なう。
  4. 老年医学会学術総会で研究発表を行なう。
  5. 国際学会にて研究発表を行なう。
他科ローテーションコース

将来老年医学全般をカバーしたいが、まだ臓器別個別研修が不十分と感じ、 もう少し他科の知識を得ておきたいという医師にお勧めです。 ローテーションの期間は本人の希望を第一に尊重しつつ他科との相談の上決定します。

学術研究活動

  1. 内部での症例報告会で発表できる。
  2. 当番制内科症例検討会で発表できる。
  3. 老年医学会地方会で症例報告を行なう。
  4. 専門領域別学術総会へ出席する。

女性研修医へのメッセージ

多くの女性医師は、医師としてのトレーニング時期と、出産育児といった女性としての人生の最も多忙な時期を同時期に抱えることに医師と家庭の両立という難しさがあります。東北大学病院では、2008年度から、育児短時間勤務雇用制度が正式に導入されました。育児をしながら勤務を続けたい場合は、上述の制度あるいは育児部分休業制度を利用しながら、自分の人生をデザインすることができます。当科は、高齢者とくに後期高齢者を診る診療科ですが、育児と介護問題は、どこか共通する点も多く、女性に適している診療科であると思われます(実際、米国には多くの女性の一流の老年科医がいます)。現医局には、上述の制度を利用しながら、仕事と家庭とを両立している先輩女性医師が複数おります。長い人生設計を考えたとき、長く細く続けられる診療科はいかがですか?

研修派遣病院(研修責任医師)

  • 石巻赤十字赤病院(矢内勝)
  • 大泉記念病院(佐藤和彦)
  • 仙台市立病院(神田暁郎)
  • 山形厚生病院(藤井昌彦)
  • 総合南東北病院(座安清)
  • 仙台富沢病院など(石塚聡)

研究プロジェクトの特色

老年科の最大の特徴は、高齢者に特化した診療科であるということです。今日多くの診療科は臓器別に区分けされた診療体制となりつつあり中で、「高齢者医療には、心身一如の全人的医療が不可欠である」ことを基本的コンセプトとしています。その意味で臓器別内科診療とは一線を画しています。老年科は、認知症研究、肺炎研究、疫学調査研究、終末期医療研究、探索的漢方研究を5つの重点領域とし、日常診療から高度先進医療までをカバーしています。

認知症研究グループ

高齢期になると、3D(Dementia, Depression, Delirium)はcommon diseaseとなります。特に65歳以降、認知症の有病率は5年毎に2倍となる。神経解剖・神経病理学や神経症候学をベースに認知症診断と治療の基本的スキルを習得する。アルツハイマー病の分子イメージング研究を機能薬理学分野や分子イメージング連携大学院と共同して開発する。J-ADNI研究を推進する。アルツハイマー病治療国際共同治験に参加する。

肺炎学研究グループ

肺炎は老人の友。肺炎は高齢者の死因の第4位であり、直接死因としては最も多いとされています。誤嚥性肺炎の一般的治療とともに、嚥下機能の感覚制御のメカニズムの解明と嚥下障害の診断と治療について学ぶ。肺炎球菌ワクチンなど予防について習得する。

疫学調査研究グループ

平成24年度より被災地気仙沼地方において、仮設住宅入居高齢者の実態調査を開始した。要介護状態の発生状況を調べる。

終末期医療研究グループ

自力で栄養摂取を行なうことが不可能になった寝たきり高齢者の栄養摂取のあり方や長期療養に伴なう問題点を研究する。老年医療における様々なレベルの情報ネットワーク構築を行ないます。

探索的漢方研究グループ

分子イメージングによる認知症の早期診断研究に連動して、アルツハイマー病の安全で根本的な治療となる薬のシーズとなる漢方生薬とその有効成分の同定を目指している。これまでに釣藤鈎や牡丹皮にアミロイド蛋白凝集抑制作用を見出した。抑肝散による認知症BPSD軽減効果の検証を臨床第2相試験として実施しています。

海外留学先

  • 米国国立老化研究所 (National Institute on Aging)
  • ハーバード大学医学部 (Harvard Medical School)
  • ペンシルべニア大学 (University of Pennsylvania)
  • カナダマクギル大学 (McGill University)
  • その他

連絡先

  • 沼崎  宗夫(准教授)
    〒980-8575 仙台市青葉区星陵町4-1
    東北大学加齢医学研究所 脳科学研究部門 老年医学分野
    TEL:022-717-7182
    FAX:022-717-8498
    E-mail:numasaki77*aol.com
    メールを送信する際は、*を@に変換してください。