てんかん科

てんかん科|後期研修要項

てんかん科の概要

てんかん科の標榜は大学病院としては全国初で、2010年3月に発足しました。てんかん診療にはチーム医療が重要で、診療各科がそろった東北大学病院は最適の施設と考えます。てんかん科は包括医療におけるつなぎ役です。神経内科、小児科、精神科、脳神経外科、高次脳機能障害科、救急部などの関連各科と連携し、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーも参加した診療体制を構築中です。
てんかんは有病率約1%の「ありふれた病」です。ありふれた疾患であるがゆえに、多くの医師は気軽に薬を開始してしまいがち、という問題があります。脳神経系の専門医であっても、ご自身がてんかんを発症した場合、自分で薬を処方して治療に失敗することが多い、という報告もあります。てんかん患者さんの約8割は専門医以外によって診療されている、との統計があります。発作が残っていても、あるいは薬の副作用が強くても、専門医に紹介されないまま漫然と治療されているケースが少なくないと言われています。このため患者さんや家族にとっては、てんかんは「呪われた病」と誤解されがちです。専門医が正しく診療すれば、多くの患者さんは普通の人と変わらない生活が送れるはずです。
てんかん診断の第一歩は詳細な病歴聴取です。けいれんだけがてんかん発作ではありません。病歴は受け身で話を聞くだけでは不完全です。発作症状を予測しながら「このようなおかしな感覚が突然、繰り返し、出てくることはありませんか」と、時間をかけながら尋ねていく必要があります。そのためには、担当する医師は発作症状を数多く経験しておく必要があります。
脳波検査も重要です。病歴と脳波所見だけで病型がきまり、薬を選択できる場合もあります。ただし脳波を過信してはいけません。脳波が正常でも薬の継続が必要な患者さんは少なくありません。また脳波の読み過ぎも危険です。微妙な所見を陽性と判断し、不要な薬の長期投与に至る場合もあるからです。
薬で発作が簡単には消えない患者さんも4割程いらっしゃいます。こうした患者さんに最適な治療を選ぶため、てんかん科では入院の上でビデオ脳波モニタリング検査を行っています。3~4日程度の連続記録で発作をとらえる最強の検査法です。この検査では、てんかんか否かの根本的な診断にも役立ちます。また発作のタイプを特定し、最適な薬を選ぶことも可能です。発作の始まる部位を特定できれば手術で治る可能性も出てきます。
てんかん患者さんは、発作以外の悩みもたくさんかかえています。抑うつなどの精神科的な悩みや、薬の副作用による悩み、妊娠や出産に対する不安、運転や仕事への悩み、さらには社会・家族・患者自身が持つ疾患への偏見などです。こうした悩みに答えていくために、よく話を聞いて適切な診療科と連携をはかることも、てんかん科に課せられた大切な仕事です。

研修コース

てんかん科では、脳神経外科・神経内科・小児科などの専門医資格と日本てんかん学会の認定資格を有する教官が、幅広い角度からの包括的てんかん診療を念頭においた指導を行っています。とくに、東北大学病院におけるビデオ脳波モニタリングユニットは、大学病院としては国内最大規模であり、発作の瞬間の患者の症候学と脳波所見を目の当たりにすることによって、てんかん診断に対する経験を短期間で積むことが可能です。
現在、日本てんかん学会の専門医資格を取得するためには、神経内科、小児科、精神科、脳神経外科などの基盤となる専門医資格を取得することが前提となっていますが、てんかん科における研修を行うことによって、日本てんかん学会の専門医試験に必要な知識を短期間で集中的に学ぶことが可能であり、基盤診療科の専門医資格を取得する前後のいずれの時期においても研修が可能です。